券作くんネーミングの「ありがたき」

2021.06.25

Profile

代表取締役社長 磯部 昌美

1990年スキー場のリフト券発券システム「券作くん」を開発し導入。1991年に株式会社グッドフェローズを創業。

チケット販売管理&営業支援システム「券作くん」

遊園地、テーマパーク、水族館、美術館、博物館、スキー場、プラネタリウム、展望台、プール、温浴施設、体育施設など、日本中の集客施設で活躍している発券システムです。また、「券作くん」で登録したチケットIDは管理をされ、販売から集計までの施設の業務に貢献しています。
そんな業界第一線を走り続ける「券作くん」のネーミングや誕生エピソードを今回はお話しいたします。

「券作くん」のネーミング

元々は、スキー場のリフト券を発券するソフトウェアを開発するにあたって名前を何とするか、いろいろ考えました。英語タイトルのイニシャルを短縮したものや、単なるコード名など浮かびましたが、当時一番売れていたワープロソフトが一太郎という名前だったので、そういう愛称系の名前もおもしろいのではないかと考えました。

候補は、いくつも浮かびましたが、最終的に「万葉」「券作くん」が残りました。

「万葉」は、たくさんの葉っぱのイメージです。
ラベルプリンターにロール紙をセットして、パソコンを操作すると次から次へとチケットが発券されます。発券する度に、それまで無価値のロール紙がプリンターから吐き出された瞬間、1枚数千円のチケットに早変わりするのです。その様をずっと眺めていて、狐が葉っぱを頭に乗せて、ドロンとおまじないを掛けるとお札に変わっているイメージが浮かびました。その葉っぱが、数万枚も発券されるイメージから「万葉」という言葉に結びつきました。もちろん、万葉集にも通じる優雅さもイメージしました。

もう一つは、単純に券を作るので「券作くん」です。
私達の子供時代は、けんさくと言えば、森田健作です。「おれは男だ」という青春テレビドラマで森田健作は誰もが知るスターで、毎週、夢中で番組を見たものでした。そう、先日まで千葉県知事としてコロナ対策をリードしていた、あの森田健作知事です。周りのスタッフに意見を聞くと誰もが「万葉」より、「券作くん」、ケンサククンの音の方が馴染みやすくて良いと言われました。
個人的には、万葉を推していたのですが、自分以外に万葉に1票を投じる人は居なかったので、「券作くん」という名前で販売して行く事が決まりました。

「券作くん」スタート

当初は、ユーザー様の大半がスキー場でした。スキー場は通年営業ではなく、スキーシーズン中のみの稼働がほとんどです。
シーズン中はアルバイトや季節従業員を含めて200名以上になるスキー場もオフシーズンは十数名の社員のみの少数精鋭で運営しているという会社が多かったので、業務の効率化が急務となっていました。

1987年に「私をスキーに連れてって」という映画が流行ってスキーブームが到来していました。
券作くんの一号機は、1991-92シーズンに小海リエックス様がスタートで歴史は始まりました。初年度は、1スキー場3台のみの稼働で、キーを押すとリフト券が発券されて、代金精算ができるだけの単純なレジに近い仕組みでした。
シーズン後に当時のご担当者の鈴木課長様に、チケット売り場の現場に案内されて郵便局から貰い受けて来たという年賀状の仕分け棚を見せて頂きました。チケット販売業務が終わると、チケット販売時にプロモーション用に発行した割引券や旅行会社や近隣ペンションの発行した引換券やバウチャー、クーポン券、送客証明などをその棚を使って同じ種別、発行元毎に仕分け整理していたのです。

ただお客様の求めに応じてチケットを発行すれば良い訳ではなく、近隣ペンションから発行されたバウチャーやクーポン券に対応して、売掛け請求データやリベート支払いデータ作成にも対応しなくてはならない要件がある事が分かりました。

それで、翌シーズンに向けて、委託先機能を追加して、売掛けにも、R(リベート)の支払いにも、値引き割引にも対応可能なように大幅なバージョンアップを実施し、Ver2.0としました。それでようやく、スキー場が求めるリフト券発券システムが完成しました。
窓口での発券業務も、業務終了後の請求支払い仕訳にも対応できた為、これまでの煩雑な業務が一変しました。まさに、イノベーションによってパラダイムが変わったと言えます。

「券作くん」の発展

「券作くん」は2シーズン目に完成できた為、3シーズン目に向けて販売開始しました。
それまでほぼ全てのスキー場が印刷済み券に、不滅インクで日付印を押すか、箔押し機で日付を転写するかして販売する手売り方式でしたから、パソコンのキーを推したり、バーコードリーダーでバーコードメニューを選択して、券種や枚数を指定して即座に発券できるシステムのデモを見て皆さん驚かれました。

その当時のスキー場はとても景気が良かったので、その性能を目の当たりにすると、その場で導入決定頂ける商談も多かったです。翌シーズンには10スキー場で50台ほどの「券作くん」が導入されました。
あるスキー場に保守点検に伺うと、スタッフの方がマスター機の1号機は「券作くん」、サブ機の2号機に「券二くん」3号機に「券三くん」と名付けて、信頼できる相棒として可愛がって下さっていたのが分かってとても嬉しかった記憶があります。

「券作くん」が、沢山のチケッティング現場でスタッフの一員として重要な役割を担って我々に代わって働いてくれていると思いました。そして、毎年、使い勝手を良くし、機能強化を続けて、「券作くん」をバージョンアップして行こうと決意しました。

そうやって、始まった「券作くん」の歴史ですが、さすがに30年も生き続けるとは夢にも思いませんでした。
MS-DOSのラップトップパソコンから、WindowsNT、WindowsXP、Windows95・・・とOSも、Btrieve→JET、MySQL、PostgreSQL、Microsoft SQL Server、Oracle Databaseとデータベース等稼働環境も幾多の変遷を超えて来ましたが、ずっと「券作くん」というネーミングで生き続けています。

30年超の長寿となって、もう暫くは続いて行きそうですが、最近は将来のチケッティングシステムのロードマップを示して欲しいというご要望を良く受けます。
まさに次代のエンタープライズ版チケッティングシステムを計画している最中です。様々なチケット施設様から多くのご要望を頂き続けて、本当にありがたいことです。

最大級のテーマパーク様でも、小規模施設様でも、日本中のチケット施設で「券作くん」は、頑張って働いています。今後もさらなるバージョンアップを重ねて、愛され続ける「券作くん」で在りたいと願っています。