集客施設の行動分析について

2024.06.27

Profile

取締役(CS部・開発部管掌) 吉津 宗吾

2000年に合同会社ユー・エス・ジェイに入社し、パークシステムの導入に従事。一度会社を離れ、多数の会社でシステム構築の事業を担当。2015年に再度株式会社ユー・エス・ジェイへ入社、新POS、ゲート導入に携わった後、2016年にシステム情報室 室長として従事。2019年より株式会社グッドフェローズへ入社し、現職は取締役 (CS部・開発部管掌)。

行動分析と一口に言っても色々とあります。
集客施設として一番大きな行動分析入場・退場からなる滞留状況の把握による平均滞留時間です。

正確な時間を割り出すには入場・退場共に着券していただくことが必要です。
入場は権利を持っているかどうかの確認になるため、当然必須ではありますが、退場時にチケットを着券していただくのはお客様としては手間が増えるだけで、動機付けが出来ないため、実施している施設はそれほど多くはありません。

ただ、温浴施設のような館内において現金・クレジットカードなどの精算手段を持たず、入場時にお渡ししたリストバンドを館内のサービス利用時に精算のため利用し、退場時にそのリストバンドで全精算して退場するという合理的かつ、お客様にも利便性の高いサービスを提供している施設では退場情報を取得することが可能となります。

そのような施設ではリストバンドという道具に本人と家族等を含めて何人で来たのかなどの情報も紐づけられ、また、施設内の様々な場所でリストバンドを使って支払うことで、どこで何をいくらで買ったかということもわかります。
リストバンドでしか精算できない施設はお客様の購入履歴が完全にわかりますし、直接精算と併用している場合は参考データとして把握することが出来ます。

リストバンド一つでセグメント単位の購入志向分析も出来ますし、適用範囲によっては行動分析もある程度可能となります。どこの店舗で昼食を取っているとか、どの有料アトラクションをどの時間に使っているのかなどで、おおまかな動きも把握できます。
また、人(リストバンド)単位の滞留時間を把握することも可能です。

ただ、そのような施設はほんの一部です。
では、それ以外の施設ではどういうことをしているのでしょうか。

先ほど述べた通り、滞留者数を把握するためには退場者数を把握する必要があります。
一部の施設ではいくつかの方法によって、退場者数を把握しています。

一番安価な方法は入場ゲート(物理ゲート)についているセンサーを使うことです。
ただ、センサーは横一直線なので、共連れでの退出等があると人数がずれますし、ベビーカーと人は別々にカウントされるなどカウントの精度はそこまで高くありません。

それ以外の方法であれば、一番オーソドックスなのは天井のカメラです。
丸い物体をチェックし、大きさで地面との高さの違いを判断し頭と認識するものです。
こちらの機能についてはセンサーと比べてかなり精度は高いですが、子供を抱きかかえているとその頭をカウントする、傘をさしたまま退場するとカウントできない等の課題もあり、精度は85~90%というところです。

ここまでが一般的な入退場のチェックと滞留者の把握の方法です。
ほぼOneWayで滞在時間が明確な施設やそこまで把握する必然性がない施設など滞留者を把握していない施設が大半です。

では、リアルタイムの滞留者を把握すると何が良いのでしょうか。
大きく三つのメリットがあります。

  • 時間帯毎の滞留時間の情報が蓄積されるため、施設内のスタッフ配置などに活用できる。
  • 大量に来場されており、施設内での安全が確保できない等の場合は、入場制限がかけられる。
  • おおよその平均滞留時間や滞留している時間帯を把握することで、行動パターンを推測し、施設内のイベントの増減やプロモーションの実施により入滞留時間や滞留時間帯を制御したり、人日売上増につなげる施策を検討することも可能となる。

ここまでは滞留時間の話をしましたが、もう一歩踏み込んでみましょう。

ある施設では地磁気によって、施設内の行動分析をしています。
GPSは屋内ではどうしても弱くなってしまいますが、地磁気の場合は建物など周辺物が発する磁気に基づいて、あらかじめヒートマップを作成し、端末(人)がどこにいるかを判断することになります。

地磁気は1Fと2Fで異なるため、フロアも把握できるのが強みになります。
それまでの位置把握にはなかった新しい技術にもなります。

ただ、課題もあります。
周りに何もないメインストリートではヒートマップがほぼ同じになるため、地磁気は効果を発揮できないため、GPSとの併用が必須となります。
また、アプリを稼働している場合にだけ把握することができるため、アプリを常時起動していただく必要があり、そのためにアプリの機能を充実させることも同時に実施する必要があります。

ある施設では実現コストが安いということでビーコン等も調べられましたが、パレードなどの電波により正常に動作しないため、地磁気(+GPS)を採用されたという経緯があります。

では、なぜ、施設内の行動分析が施設にとって意味があるのかという点になります。
施設内の飲食店と物販店はほとんどPOSを導入されているため、どういう時間帯にどういうセグメントの方がどういう商品を購入されているのかを把握することは可能ですし、多くの施設では実施されています。
ただ、それらは点であり、線にはなり得ませんし、あくまでも情報として、後で分析のために使えるものであり、リアルタイムの活用は困難です。
もちろん、多くの施設ではそれらのデータを使い、セグメント別のABC分析などの志向性分析などを行い、新商品の開発や店舗運営(営業時間やスタッフの配置)を実施しています。

一方、地磁気を用いる手法を取った場合、人の居場所をリアルタイムに特定することができ、さまざまなプロモーションに使うことが出来ます。現在の居場所の近くのアトラクションや飲食店への誘導、近くのアトラクションの優先搭乗券のご案内などです。
もちろん、フロア把握も出来ますので、物理的に直近のアトラクションや店舗が分かることになります。

また、行動を線として入手することができます。そうすることで、人流が分かります。
Aのアトラクションに参加し、その次にBのストリートショーを見るなどです。
であれば、それを把握することでどのストリートが混んでいるのか、それを緩和するにはどうするのか、どこで何時にショーをすると効果的なのかなど施設内でのプロモーションの打ち手に総合的に役立てることが可能になります。

今回は人流の把握の方法と目的について話をしましたが、施設運営・経営のDX化の一部として、集客施設内のIT化も日々進化しています。
ベンチ下にセンサーを設置し、利用度合いを把握している施設もあるかと思えばゴミ箱にセンサーを設置し、効率的なごみ収集を実施している施設などもあります。

私たちGFも日々ITの最新技術を把握し、集客施設に対して継続した提案が出来るように努めたいと考えています。