西成先生、群集マネジメント研究のありがたき

2022.11.17

Profile

代表取締役社長 磯部 昌美

1990年スキー場のリフト券発券システム「券作くん」を開発し導入。1991年に株式会社グッドフェローズを創業。

2022年10月29日の深夜、韓国ソウル市の繁華街梨泰院(イテウォン)の路上で154人が死亡したという事故報道は衝撃でした。群衆が狭い路地に殺到して、倒れたり、立ったまま押し潰されて呼吸ができなくなってしまい多数の若者が死亡しました。

群集マネジメントついて

報道番組などで事故の発生メカニズムと群集マネジメントについて解説されている東京大学・西成活裕教授とは、2015年にある銀行主催のセミナーでの講演を聞いて以来、とても親しくさせて頂いています。

そのセミナーで群集や群集による混雑、渋滞対策などについて深く研究されている事にびっくりし、講演が終わって直ぐに名刺交換させて頂き、GFの仕事場は全て混雑する集客施設で混雑緩和、入込みの平準化が最大の課題である事をご説明し、西成先生もGFのように集客施設専門のチケッティングシステム、入退場管理を手掛けている会社がある事はご存じなく、想像もしなかったと相互に出会いを喜びました。

そして、西成先生が以前より構想し、温めていた群集マネジメント研究会を発足させるのにあたり、GFは事務局として参加、研究会運営に協力させて頂き、3年間、東京大学と参加企業群との社会連携講座として共同研究しました。その成果は、「群集マネジメント総論: 理論と実践」にまとめられ、2020年6月に東京大学出版会から出版されました。

この本は、西成先生が群集マネジメントのバイブル(教科書)を作りたいと、まさに3年間の研究成果をまとめられた物です。

雑踏事故や人なだれと言われる明石花火大会の事例研究もしましたし、メッカ巡礼事故やドイツのラブパレード群集事故などについても度々、研究テーマとして上がりました。

「群集マネジメント総論: 理論と実践」には、事故を起こさないプランニング方法から、シミュレーション手法、人流検知、行動制御まで詳しく解説されています。

韓国ソウル市の繁華街梨泰院の地元商店街関係者、警察・公安関係者がこの本を読んで勉強していれば、この悲惨な事故は未然に防げたのではないかと、感じました。

本当に教科書と言えます。イベント企画や施設運営する方々には、必読書と言っても良いです。

西成先生のFacebookに連日、テレビ報道番組に呼ばれて事故解説するのも大変だとのコメントが上がっていましたが、ただでさえ超多忙な西成先生。普段からGWやお盆のUターンラッシュ渋滞の解説や対策案などでマスコミ露出の多い先生ですが、こういう群集事故が発生すると引っ張り凧で更に大変だと想像します。

群集マネジメント研究会は、3年間の研究期間終了後、2020年4月からJST(国立研究開発法人・科学技術振興機構)の研究プロジェクトに参画して、発展的に活動し、3大学と4企業が協力して、「ひとりひとりに届く危機対応ナビゲーターの構築」を目標に群集マネジメントの情報流通プラットフォームサービス(CMPaaS)提供の研究を続けています。

参加各大学、企業が自らが持つ研究テーマや技術、得意を生かしてCMPaaSに必要なパーツの研究開発を進めていっていますが、グッドフェローズの目標は、「群集予報」です。いつ、どこで、どんな規模の群集が発生するかという事をチケット流通データや施設の入込み予測データを活用して、予報を実現しようという壮大な試みです。

人が1か所に集まりすぎて突然起こる悲惨な群集事故、そういった事故が発生しないよう予め予測し、もし過密になりそうだったら行動変容を促し回避させる仕組み、そういった情報プラットフォームサービスが実際に提供されて、社会に役立てる日が来る事を切に願っています。

梨泰院の事故で亡くなられた方々、怪我をされた方々に心よりお悔やみとお見舞い申し上げます。合掌。

※群集マネジメント研究会では、群衆と群集は使い分け、研究会としては群集と表記しています。